「デスクワークのあと、立ち上がる瞬間に腰が痛い」
「車を長時間運転したあと、腰が伸びにくい」
「しばらく座っていると、立った直後だけ腰が固まった感じがする」
このような経験はないでしょうか。
しばらく歩いていると楽になるのに、長く座ったあとの最初の数歩だけ腰が痛い。
そんなとき、
「座りすぎて筋肉が固まったのかな?」
と思うかもしれません。
もちろん筋肉の影響も考えられます。
しかし、長時間同じ姿勢を続けたときに変化するのは、筋肉だけではありません。
椎間板や靱帯など、腰を支えている組織にも時間とともに力学的な変化が起こります。
今回は、「長く座ったあとに腰が動きにくく感じるのはなぜなのか」を、腰の組織に起こる変化から考えてみます。まずは長時間同じ姿勢を続けたときに、腰の中で何が起こっているのかを見ていきましょう。具体的な対策については、次回詳しく紹介します。
「長く座ること」だけが腰痛の原因ではない
「座っている時間が長いから腰が痛くなる」
そう思われがちですが、実はそれほど単純ではありません。
これまでの研究でも、座っている時間の長さと腰痛との関係については、結果が一致していません。
長時間座っていても腰痛がない人もいれば、それほど長く座っていなくても腰痛に悩む人もいます。
一方で、最近の研究をまとめた報告では、座っている時間そのものだけでなく、
- 長い時間、同じ姿勢を続ける
- 座っている途中で姿勢を変えることが少ない
- 立ったり動いたりする機会が少ない
といった「どのように座っているか」も、腰痛と関係する可能性が示されています。
つまり大切なのは、
「座ること=悪い」と考えるのではなく、同じ姿勢や同じ状態が長く続いていないかを見ること。
では、同じ姿勢で長時間座り続けると、腰の中ではどのような変化が起こるのでしょうか。
靱帯なども、同じ姿勢が続くと少しずつ変化する
長時間同じ姿勢を続けたときに変化するのは、椎間板だけではありません。
腰を支えている靱帯などの組織も、同じようにずっと同じ状態を保っているわけではありません。
たとえば、腰を曲げた姿勢が長く続くと、腰の後ろ側にある組織には引っ張られる力がかかり続けます。
こうした力が一定時間続くと、組織は少しずつ伸び、最初よりも腰が曲がりやすい状態になります。
このように、同じ力が加わり続けることで、時間とともに組織が少しずつ変形していく現象があります。
実際に、腰を曲げた姿勢を20分間続けた実験では、時間が経つにつれて腰がさらに曲がるようになり、20分後には最大の曲がる角度が平均5.5°増加しました。
つまり、長時間同じ姿勢を続けたあとに身体を動かすときは、座る前とまったく同じ状態ではない可能性があるということです。
姿勢を変えても、すぐに元の状態に戻るわけではない
では、長く同じ姿勢を続けたあと、姿勢を変えれば身体はすぐに元の状態に戻るのでしょうか。
先ほど紹介した実験では、20分間腰を曲げたあとに楽な姿勢へ戻すと、最初の2分ほどで変化の約半分が回復しました。
ただし、そこで完全に元通りになったわけではありません。
その後も時間をかけて、少しずつ元の状態へ戻っていきました。
つまり、
長く同じ姿勢を続ける
↓
腰の組織に少しずつ変化が起こる
↓
姿勢を変える
↓
すぐに元通りになるわけではない
↓
時間をかけて回復していく
ということです。
この研究からも、長時間同じ姿勢を続けたあとの腰は、姿勢を変えた瞬間にすべてがリセットされるわけではないことが分かります。
だからこそ、長く座ったあとにいきなり大きく腰を動かしたり、重いものを持ったりするのではなく、まず立ち上がって少し歩くなど、身体を徐々に動かしていくという考え方が大切になります。
実際に研究者らも、長時間腰を曲げた姿勢をとったあとに負荷の大きな作業をする場合には、その前に数分間立ったり歩いたりすることを提案しています。
では、普段のデスクワークや長時間の運転では、どのくらいのタイミングで姿勢を変えればよいのでしょうか。
また、立ち上がったあとには、ストレッチをした方がよいのか、それとも少し歩くだけでもよいのでしょうか。
次回は、長時間座るときにできる具体的な対策について、科学的に考えていきます。



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