午前中は気にならないのに、夕方になると首から肩が重くなる。
肩を揉んだり、首を伸ばしたりしても、パソコンに向かうとまたつらい。
「毎日ストレッチしているのに、どうして戻るんだろう」
そんな悩みはありませんか。
首こり・肩こりの対策では、つらい場所をほぐすことに加えて、仕事中にどんな負担が続いているかを見直すことが大切です。
私は大学病院で16年間勤務した理学療法士として、身体の状態と、日常生活での使い方をあわせて考えることを大切にしています。
今回は、デスクワーク中の首・肩のつらさについて、確認したいポイントと、仕事中に試せる工夫を紹介します。
まず「いつ、何をするとつらいか」を整理する
首こり・肩こりには、長時間同じ姿勢で行う作業や運動不足、精神的なストレスなど、複数の要因が関係します。姿勢の見た目だけで原因を決めることはできません。
理学療法士として、まず確認したいのは次のようなことです。
- 入力作業とマウス操作では、どちらがつらいか
- 右肩と左肩で、つらさに違いがあるか
- 作業を始めて、どれくらいで気になり始めるか
- 席を立つと楽になるか
- 休日にも同じ症状があるか
例えば、右手でマウスを使う時間に右肩がつらくなるなら、マウスの位置や腕の支え方は確認する価値があります。
ただし、それだけで原因が確定するわけではありません。症状が変わる場面を探し、対策を選ぶ手がかりにするという考え方です。
「姿勢を正す」前に、机の上を見直してみる
「背筋を伸ばさないと」と、胸を張り続けていませんか。
厚生労働省のガイドラインでも、情報機器作業では自然で無理のない姿勢をとれるよう、機器や机・椅子を調整することが重視されています。
身体を頑張って机に合わせる前に、机の上を身体に合わせてみましょう。
画面を見るために、顔を近づけていない?
小さな文字を読むたびに顔が前へ出るなら、まず文字の大きさや画面の位置を調整してみてください。
画面は正面に置き、見上げ続けたり、深くうつむき続けたりしない位置を探します。
ノートパソコンでは、画面を高くするとキーボードも上がります。必要に応じて外付けのキーボードを使うなど、画面と手元を別々に調整する方法もあります。
マウスやキーボードが遠くない?
操作するたびに腕を前へ伸ばしているなら、機器を少し身体に近づけてみましょう。
そのとき、肩をすくめずに操作できるか、肘が身体から離れすぎないかを確認します。
「正しい位置は何cmか」だけでなく、いつもの作業をしたときに、肩の力を抜きやすいかが大切です。
腕を支えられる?
前腕の一部を机や肘掛けに軽く預け、肩が楽になるか確かめてみてください。
肘掛けが高すぎて肩が上がったり、机の角で腕が圧迫されたりする場合は調整します。
まずは一か所だけ変えて、入力やマウス操作のしやすさを確認しましょう。
仕事中に試したい、身体の動かし方と休み方
① つらくなり切る前に、作業を区切る
夕方にまとめてストレッチをするだけでなく、作業の途中で姿勢を変える機会をつくりましょう。
厚生労働省のガイドラインでは、一連続作業を1時間以内とし、次の連続作業までに10〜15分の作業休止時間を設け、その途中にも1〜2回の小休止を入れることが示されています。
作業休止は、単に仕事を止めることではありません。画面やキー操作から離れ、別の業務に切り替える方法もあります。
書類を取りに立つ、少し歩く、遠くを見るなど、仕事の流れに組み込むと続けやすくなります。
② 肩を軽く上げて、ゆっくり下ろす
休止中に試す動きの一例です。
- 座ったまま、両肩を無理のない範囲で軽く持ち上げます。
- 息を止めず、ゆっくり元へ戻します。
- まずは3〜5回程度、少ない回数で試します。
大きく動かすことより、動かした後に肩の力を抜きやすいかを確認してください。痛みが増える場合は中止します。
③ 首は勢いをつけず、楽に動く範囲で
首を動かす場合は、ゆっくり左右を向くなど、無理のない範囲から始めましょう。
手で強く引っ張ったり、痛みを我慢して限界まで伸ばしたりする必要はありません。首の運動は、症状を悪化させない範囲で行うことが基本です。しびれやめまいが出る場合は中止し、相談してください。
回数をこなすことより、動かした後にどう感じるかを大切にしましょう。
効果は「その場の軽さ」と「夕方の状態」で確かめる
対策を試すときは、一度に全部変えるより、一つずつ確かめる方が、自分に合う工夫を見つけやすくなります。
例えば、今日はマウスの位置を近づける。次は、作業途中に席を立つ機会を増やす、といった方法です。
確認するのは、次の3点です。
- 作業中の首・肩のつらさはどうか
- つらくなり始めるまでの時間はどうか
- 夕方の仕事のしやすさはどうか
簡単な記録として、つらさを0〜10で残してもよいでしょう。
その場で軽くなっても、仕事を続けると戻る場合があります。反対に、すぐに変化がなくても、数日間の作業では違いを感じることもあるでしょう。
ただし、変化だけで原因を断定したり、悪化しているのに続けたりしないことが大切です。
肩こりとして済ませず、受診したい症状
首・肩の症状が続く、悪化する、仕事や睡眠に支障がある場合は、整形外科などへ相談してください。
特に、腕や手のしびれに加えて、力が入りにくい、物を落とす、ボタンを留めにくい、歩きにくいといった変化がある場合は、早めの評価が必要です。首の神経や脊髄の問題が関係することがあります。
理学療法では、症状の出方、首や肩の動き、筋力、作業環境などを確認し、医師の診断も踏まえて対策を考えます。
明日の仕事では、一つだけ変えてみましょう
首こり・肩こりの改善を目指すとき、ストレッチの種類を増やす前に、見直せることがあります。
マウスを近づける。腕を支える。作業の途中で立つ。
まずは一つ選び、夕方の状態を比べてみてください。
目指したいのは、肩のことが気になって仕事が進まない時間を減らし、帰宅後も過ごしやすくすることです。
身体のつらさだけでなく、そのつらさが生まれる仕事の場面まで一緒に考えることを、理学療法士として大切にしたいと思います。
参考資料
- 日本整形外科学会:肩こり
- 厚生労働省:情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン
- 日本整形外科学会:頚椎症性脊髄症



コメント